㈱牛コンサル 酪農コンサルタント 代表中野です。

地頭が良い、計算が早い、能力が高い人間は相対的に少ない部類に入ります。
能力が高い人の方が、経営者に向いているのか。
能力が高い人の方が、経営は良好なのか。
能力が高い人が経営した方が良い!と思うのが一般論であるが、僕はそう思わない。能力の差が5倍あったとしても、意識の差で100倍の差が広くことがある、ということ。

能力の高い、頭の回転が早いと「結論」がすぐに出てしまいます。ある課題に対して、どう達成するか?ではなく、どんな困難があるのか?という思考に入り、数多くの困難が浮かび、結論として「できません」となりやすいわけです。できない理由をすぐに想像できてしまうわけです。
さらには、「できない人」を許せない、という問題もあります。自分ができる、から他もできるのが当たり前で、できない理由が理解できない。それによって、人心掌握がうまくいかない。こういうパターンもあります。
能力が高いだけで、全て上手くいくはずがありません。
それよりも意識の差で、経営の結果が左右される、その可能性の方が大きいと思われます。

こんなエピソードがあります
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 東京に出張した時のことだ。昼間から取引先との打ち合わせがはじまり、それが終わると時計は午後二時を少し回っていた。取引先の担当者から「この時間になるとランチタイムが終わり、ほとんどの店が閉まっているのでご馳走はできませんが、近くにとても繁盛しているラーメン屋があるので、ご一緒しませんか」と誘われた。私は、どんなに美味しいラーメンを食べさせて貰えるのかという期待に胸を膨らませて、ワクワクしながらその話題の店に向かった。
 外観はごく普通のラーメン屋だった。我々が店の前に立った途端、なかにいた若い店員が入口まで走ってきてドアを開け「いらっしゃいませ」と大きな声であいさつをして、「どうぞ奥のテーブルが空いています。ご案内します」と席まで誘導してくれるのだ。念の為に断っておくが、この店はレストランではない。30席ほどのカウンターとテーブル席7、8台のどこにでもあるラーメン屋だ。午後14時を回っているのに店の中はほぼ満席。お昼前後と夕方以降は店の外に長い行列ができるらしい。
 席についてラーメンを注文すると、その店員は大声で調理場にオーダーを伝えてからひとなつっこい顔で、「お客さんは関西から来られたんですか」などと私に話しかけてくる。我々と話している最中m、チラっと入り口の方に気を配り、客が店の前に立つと飛んでいく。しばらくしてラーメンが運ばれてくる。思った通りごく普通のラーメンで味で勝負している店ではなかった。
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このエピソードに当てはめると、個人の能力の差なんて5倍も違わない。
同じ料金で5倍美味しいラーメンをつくったり、1/5のスピードでお客様にラーメンを提供するのは不可能に近い。
けれども、店員の意識を変えることによって、お客の気分を100倍よくするのはそれほど難しいものではない。この店が繁盛しているのは、ズバリ店員の意識の高さ、経営者の意識の高さである。
経営者が重要視すべきなのは、能力よりもどうしたら「意識」を高く持っていけるか、意識の差によって、経営の中身、内容が左右される。