経営における「実力」とは、結果である。ある経営者がいたとして、経営者としての実力があるかどうかの指標は、結果、つまりは、赤字か黒字か、という結果で評価される。つまり、この結果が、実力となる。
この「実力」を上げるにはどうすればいいだろうか。

我々が想像する、結果の高い、実力ある経営者とは、何でもできるスーパーマンを想像する。そうした人間は、人としての魅力も高いし、困難にも立ち向かえる、そう思える気がする。
何でもできるスーパーマン、そういうリーダーがいる組織は、万全とは真逆、非常に危うい。
なぜか?

むしろ、失敗ばかりして、挫折を経験した者こそ、リーダーたる素質を備えている。

苦労せず何でもできる人間には、できない人間の悩みや苦労が理解できない。自分は簡単にできても、簡単にはできない人間もいる。その人間に対して、できるまで付き合うことができるかどうか。何が問題なのか、何ができないのか、理解できない可能性が高い。
リーダーや指導者には、そこまでの忍耐と理解が求めれる。経営者こそ、こうした能力が必要になる。今までの自分の「挫折」や失敗が、これからの自分の指導に生かされるのだ。

「できるまでやる」の中で、ここからさらに、細かくステップを分けていく。1つ1つ階段を小刻みに刻むように、1歩1歩確実に登れるように、段階を踏む、そういう風にして、仕事を教える。
自分なら、こんなこと簡単にできるのに、なぜ、あなたはできないのか?ではなく、1つ1つこれができたらじゃあ次はこれ、というように指導できるか、それは、自分自身が挫折を知らないと、決してできることではない。

ある経営者にお会いしたときに、非常にお金に細かい方がいた。その人は、一度、親が経営していた会社が潰れてしまった経験を持っている。一度倒産した経験から、キャッシュの大事さが身に染みて分かる、と。意味のない無駄なお金の使い方なんてとてもとてもできるものではない、と。一度倒産を経験した方が、キャッシュを大事にする経営者になれる、そこまで言い切っていた。経験が人を強くする。特に大きな挫折が、自分を成長させてくれる。