㈱牛コンサル 酪農コンサルタント 代表中野です。

小売店の店長を任されたとしよう。その店の店長として、よく売れている店舗だけに勤務していると勝手に売れていくのだと誤解してしまうことがある。
「ぜんぜん売れない」というのを経験しないと、商品は陳列しておけば勝手に売れていくものと錯覚してしまう。

小売の世界でよく起きることである。
売れる商品さえあれば、勝手に商品が売れる・・・ましてや、それが1ヶ月、3ヶ月、半年も続けば、この状態がこの先も永遠に続いていくかのように錯覚する。
しかし、消費者の感覚、嗜好は知らぬ間にどんどん変わり、商品や店舗に飽きていく。その店舗が何か新しいことをしなければ、そこでその店はおしまいになる。

これはどんな商売にも同じことが言える。
黙っていても、売れる、儲かる、という状態になると、途端にヒトは怠ける。
今までやっていた仕事を、どんどん手抜きを始める。だって、それでも儲けることができたんだから、無駄じゃん。と。
これは酪農経営も一緒で、今まで特別なことをしなくても搾れていたから、これからもきっと同じだけ絞れるはずだ・・・という気持ちの結果、それ以下の乳量になる場合が多い。これは、今までと同じ・・・なのではなく、それ以下の管理をしている中で発生していることであり、売上(乳量)を戻すには相応の努力が必要になる。何も不思議なことはないのだが、本人だけ、納得がいかない。経営者本人は、今までと同じことをやっている気になっているだけで、正確に把握すれば、必ず手を抜いている、から、売上が伸びない、という発想が必要である。

上手くいっている時に、我々は必ず勘違いを起こす。この勘違いが、勘違いであったことに気づくのは落ちた後だ。できれば、上手くいっている間に気づいて、すぐに改善したいのだが、そう上手くいかない。
経営が上手くいっている状態の時に、何を言っても聞かない、「きをつけたほうが良い」なんてアドバイスしても、言うことを聞かない。何をしても儲かる・・というような全能感に支配されていて、有頂天になっているからだ。
一方で、経営が悪い時には、逆の現象が起きる。「今必要なことは・・」というような話しも、その話しが即効性があるわけじゃない。すぐに改善できるなら、すぐやるべきだが、そんな簡単じゃない。でも・・・すぐに。経営が悪い時、経営者の多くは、我慢ができない、辛抱強く、コツコツとまた1から積み木を積んでいくように、1つ1つやるしか方法はないのだが、その我慢ができない。すぐに即効性のある、簡単な方法を探してしまう。

酪農経営に限らず、小売だろうが、どんな商売でも、「調子が良い時」にどうやって、奢らないか、油断しないか・・であり、経営が悪い時には、我慢して我慢して1つ1つ積み上げることができるか、というのが、経営における正道なのだと思う。