㈱牛コンサル 酪農コンサルタント 代表中野です。

「投資するお金がない」「場所が悪い、向いてない」という、自分の経営に関して、なぜ?こうなのか、という大なり小なり不満を抱えている経営者は多い。これらの「不満」は言い訳の材料になるが、一方でこれは戦略上にプラスに働くことがある。むしろ、プラスにすべきだ。

軍隊を率いる武将の他に戦略家・軍師の存在は大きい。戦いに特化した軍師といえば、国士無双と呼ばれた「韓信」や諸葛孔明も憧れた「楽騎」などがいる。彼らは、不利な状況から「知恵」を絞って、その不利を利点に変え、戦局を覆す。その発想力にパワーを注いでいる。どんな状況であれ、腐らず可能性を模索すれば、どこか突破口はあるはず、それは時に「不利な状況」を利用することに繋がる。

経営していれば、どうしてもボトルネック、経営上最大の課題とも言うべき課題、この課題をクリアしなければ、経営全体へ悪影響を与える。というのが、ボトルネックだ。
このボトルネックは、経営者はみんな自分で何がボトルネックなのか、分かっている。

酪農経営における、悩みは、1つ 「お金」2つ「労働力」3つ「将来性」といったところだろうか?僕の経営コンサルを受けた方の8割の方は、必ずこの「お金」に関して、特にキャッシュフローに関して「なんでもっと早く知らなかったのか・・」という後悔をしている。もっと早く知っていれば・・・という後悔。僕の仕事上、よく目にするタイプがこれだが、実際には、キャッシュフローの概念を知っていても、実際に経営をして「お金」について悩んだことがないヒトには、理解できないことの方が多い・・と感じている。つまり、早くから知っていても役に立ったか分からないというのが、僕の感想だ。
でも、残念な事実だがほとんどの経営者と呼ばれるヒトは、このキャッシュフローと利益が違うことが本当に理解できていない。これは、農協が悪いとか、ホクレンが悪いとか、政治が悪いとか、これら全てを含めて、自分が経営を理解していなかった・・・と本気で思えるかどうかである、と僕は考えている。
有名なコンサルタント、一倉定は「郵便ポストが赤いのも経営者のせいだと思え」という名言を残している。経営の結果がどうであれ、全てはその管理者である経営者が悪いのだ、と本気で思えるのか。
この意識の差は大きい。

他にも、労働力に課題があるのであれば、「牛屋がやれれば良いこと」という手当たり次第になんでもやる・・なんて、戦術は不可能だ。となれば、どこにリソース(資産・時間)を注げば、1番効果的なのか?を考えなくてはいけない。搾乳牛全てに1頭ずつ5分をかけるなんてことはできないが、乾乳ならそれが、できるかもしれない。忙しいなら尚のこと乾乳にリソースをさくべきだ。

昔、富良野にある「スガノ農機」の「土の館」という土壌の博物館に行ったときに、そこの館長さんの話しが印象的だった。
その館長さんは、訪問農家に必ず「君の家の農地は良いのか?悪いのか?」と聞くそうだ。
「良い」と答えれば、君は残念だねと返答し、「悪い」と言えば、君はラッキーだねと返答するそうだ。土壌改良とは、実践の中でしかできないもの、それが経験できるかどうか君の今後の人生に大きく影響する・・という考えだそうだ。

酪農経営はなんとなく競争と無縁であると答えるヒトが多い。僕はそんなことはない、と思っている。どんな業界でも同業者はライバルたり得る。問題は、そのライバルとの差をどう戦略にいかせるのか?だろう。その差がボトルネックになっている可能性が高い。