経営の言葉で綺麗事のように言われる「お客様のために」。お客様のために、考えて経営する、ということが盛んに言われます。が、それは正しいのか。嫌なお客様も当然いるわけで、それでもお客様のために、が大事なのか。経営者として葛藤が起きるわけです。
飲食店経営においても、お客様は神様である、という事を、呪いのようなものである、と揶揄するような事も、ちょくちょく起きています。
「お客様のために」という言葉を、より詳しく解説します。
経営者は困れば困るほど、自分の会社の数字、売上や利益を優先しようとします。売上が増えれば、利益が増えれば、経営が良くなるのに・・と短絡的に考える。そうなってしまうと、何をやるか?といえば、もっと利益を取るために、「安かろう、悪かろう」でも、それでも仕方がない、という結論に。飲食店経営でいえば、原価をもっと下げよう。味がちょっとくらい落ちても分からないよ、それも仕方ない。というような発想になってしまう。コストダウンしかできない、そんな経営になってしまう。
なぜ、この短絡的なコストダウンでは経営が良くならないのか。
この短絡的なコストダウンは、顧客が求めているのとは、逆の方向を向いています。飲食店経営でいえば、味が美味しくて、単価もそこそこで、雰囲気が良くて、楽しい食事がしたい、だとすると、味が落ちて、単価はそこそこなら、わざわざ行く必要がない、という結論になってしまいます。
自分本位、自分の都合を相手に押し付けて、姑息のようなやり方をしてしまう。自分の過去の成功体験(古い、時代に合っていない)や自分本位の考えを押し付けるばかりで、そこから真剣にお客様のことを考えていない。これで上手くいくはずがありません。
こう言い方をすると、じゃあ、原価も高いし、値上げするしかないし、そうなると、顧客が減るし、売上も利益も減るし、どうしたらいいんだ。となるでしょう。
ある方が言っていた印象にある言葉があります。これは飲食店経営というよりも、プロを名乗る人全般に言えるわけですが、「美味しいものを作るのは当たり前で。その美味しいものを、コスパが良い食材で再現したり、より美味しく感じれる演出を用意したりするのがプロである。家庭ではできない商品を提供してこそ、プロである」
誰でもできるようなものを提供しても、そこに付加価値(粗利)は生まれない。自分にしかできないようものを作ってこそ、価値が生まれる。ということです。
これは、言うは易し 行うは難し、で、簡単にできるものではありません。例えば、本当に素晴らしい食材を仕入れるのに1年、2年とかかるかもしれません。これはあくまで飲食店経営であり、この発想を酪農に置き換えれば、「牛」が顧客であり、お客様です。「牛」が喜ぶような、飼料、環境、を用意する。他者には真似できないような、商品(飼料、粗飼料、環境)を用意する。それは、一朝一夕ではできません。時間がかかってもやる。
これが本当の「お客様のために」なのです。
