㈱牛コンサル 酪農コンサルタント 代表中野です。

和牛繁殖農家の経営がとても悪いようです。素牛(10ヶ月)価格が、60万円以上で販売していたのが、およそ40万円くらいまで下がっています。和牛の濡れ仔(生後1ヶ月以内)も、以前は40万、50万となっていた価格が、今や25万円ほどまで下がっています。
これは、和牛子牛の需要、肥育農家の買いが下がっているから、ついては、和牛肉の販売数量も思ったように伸びていかない、ということが起こっている、からだと思います。

こうした状況に、我々はどうしてもすぐに「マクロ(全体主義)」的に語ってしまいます。マクロ視点で語る、とは、たとえば、「和牛はこれから先、霜降りではなく美味しさで評価されるべきだ」とか「もっと富裕層が買うべき」「輸出に力を入れなくては」などという、一見すると正しいことのように思いますが、実際には、我々には、そこまで大きい関与(影響)がないことを、考え続けてしまうことです。残念ながら、零細企業には、マクロは関係ありません。
しかし、マクロ視点で語ると、「気持ちいい」のです。和牛の評価を霜降りではなく、美味しさで!というのは、特定の誰か個人を否定しているわけではありません。が、現状の制度を否定している、ことに酔ってしまうのです。この気持ちよさに、呑まれてはいけない、ということです。

究極の発想が、このままだと日本の和牛がいなくなる、というものです。
断固否定しますが、いなくなりません。仮に日本の和牛が減ったとしても、残念ながら海外の和牛が伸びてくる、ということでしょう。世界の市場では、絶対量が増えていくでしょう。
こうした、意味のない脅迫は、和牛だけではありません。
もう日本の牛乳は飲めなくなる。日本のトマトは食べれなくなる。日本の米が食べれなくなる。今自分が思っていることが、正しい、合っている、と万能感に酔いしれる、何も意味がありません。

今、我々がやるべきことは、マクロ(全体)ではなく、ミクロ(身近)です。目の前の自分の経営の課題を1つ1つ、改善していくこと。成績を上げていくこと。乳量を増やしていくこと。それだけです。その1つ1つの積み重ねを、やるしかありません。
経営者の心は、弱いです。すぐに、折れてしまいます。すぐに助けを求めたくなります。しかし、経営者がやるべきことは、必ず現場にいくらでもあるはずです。その課題、問題を1つ1つクリアしていく、これをコツコツ続けるしかありません。