㈱牛コンサル 酪農コンサルタント 代表中野です。

今年と来年の酪農経営の現実について考えておこうと思います。

2021年7月現在、日本全国の脱脂粉乳の在庫は9万トンを超えています。これは、過去生産調整が起きた年の在庫を超えている数字です。さらには、一緒に発生するバターも4万トンを超えていて、これも過去10年でピークです。バターに関しては輸入もしているので、「それを止めればいいんじゃないのか?」という声もありますが、それは国家間の約束(カレントアクセスCA・・最低限これだけは輸入するという約束)ですから、一方的に反故にしたらもう二度と取引できない・・ということになりかねません。なので、日本政府も輸入を止める気はないようです。

さらには、飲用向け需要が高まる夏場でこれですから、これから冬相場の中ではさらに在庫が高まる可能性が強くなっています。つまり、これから生産調整かもしくは、乳価の大幅下落の可能性が高いというわけです。「全量取引」というのはあくまで酪農家と指定団体との取引ですから、ここから指定団体とメーカーとの契約は2022年どうなっていくのか?相当厳しい交渉になるのは間違いないでしょう。

コロナショックの影響が1年遅れてやってきているというわけです。既存のサプライチェーン(需要と供給の流れ)が壊れつつあり、例えば休校によって飲まれるはずだった牛乳が・・というわけです。今年はさらに大旱魃のために、飼料作物が不足するパターンも見られます。北海道全体で雨量が前年比10〜15%ほど、オホーツクではわずか6%ほど。飼料の購入も検討しておかなくてはなりません。もちろん、畑の農業も玉ねぎ、ジャガイモも小ぶりで、価格も落ちており、かなり厳しい状況にあることは間違いありません。
こういう時に限って壊れなくていい機会が壊れます・・あるあるです。

こんな時こそ、経営者の質が問われます。やるべきことは「キャッシュ(現金)」の確保と、売上を伸ばすもしくは維持のために「常に考えること」頭を使うしかありません。ここで絶対にやってはいけないのは、経費削減です。コストを下げようと今までよりも・・・をやめよう、とか考えると、機械の整備を1年遅らせようとかを考え出すと・・売上の意地どころか実際にはそれ以上に売上が10%も20%も下がってしまいます。今こそ経営者なら考えて考える時です。