㈱牛コンサル 酪農コンサルタント 代表中野です。

2024年乳価は据え置きと決定しました。
この発表を受けて、「価格を自分で決めることができない産業は辛い」という意見があったので、それについて解説したいと思います。

酪農産業の生乳取引に関して、生産した商品を全て買取している・・という最大のメリットがあります。これがどれだけのメリットかというと、生乳生産はお金を作っている行為に等しいということになります。通常、生産した商品は、販売しなくてはなりません。黙っていて売れるほど、簡単ではありません。広告、CM、さらには低価格、あらゆる手段を用いて「売らなくて」はなりません。そこにも、お金も営業マンも必要になります。莫大なコストがかかるわけです。このマーケティングが必要ない、というのは、非常にコストが安いという認識が必要です。
一方で、生産したモノがお金になる業界では、それはそれでデメリットがあるわけです。それは、「誰でも作れるが故の価格低下です」。これは、一時的に価格があがったとして、その商売が儲かる・・と分かれば、外からプレイヤーが登場してその競争に加わるだけなので、生産量が増えます。酪農家件数が10%減っても、生産量が10%以上減っていないのは、これが理由です。どんな業界でも、競争が生じます。酪農業界では、この低価格こそが競争です。農業でも一緒で、生産量が増えれば価格は低下します。一時的に不足しても、儲かるとなれば、また生産量が増え、それによって価格は低下します。この業界は、低価格から避けられない宿命なのです。

では、違う産業で「自分で価格を決める産業」が素晴らしいのか?というと、そうでもありません。なぜなら、自分で価格を決めているように思うかもしれませんが、結局のところ価格を決めるのは購入者だからです。そこには、商品の価格、品質、マーケティングが複雑に絡むからです。
残念なことに、店を作って、ただ待っていても、お客さんは来てくれません。
ホームページを作って、誰かがくるのか?来ません。
どうやって売り込むか・・・アイデアと行動力、両方が必要なわけです。そこに時間と人とお金がかかるわけです。

結局のところ、「価格を自分で決めれる産業」が羨ましいと思うのは、ただ隣りの芝生が青く見えているだけなんです。その業界の差に意味がないんです。メリットだけが、青く見えて、その仕事をすればその仕事なりの問題、課題が同じように山ほどあって、「どうしたらいいのか・・」と同じように悩むだけなんです。
むしろ、外の景色が良く見える場合に気をつけなくてはなりません。それは、気持ちが逃げているからです。自分の仕事のメリットとデメリットを再度見つめ直して見ると良いと思います。