㈱牛コンサル 酪農コンサルタント 代表中野です。
ここ1年ほど、乳量が伸びない、という相談が多い。
その原因を特定しようとして、あれこれ対策をしても効果がない。なんとくなく、昨年の猛暑の影響が尾を引っ張っている・・という話しになる・・が、この認識は正しいのか?
この事を冷静に僕なりに分析して、推測してみる。
確かに、昨年の猛暑は記録的な暑さで牛も相当バテたと思う。例年なら、秋口が過ぎて10月頃から回復してくる乳量が12月になっても回復しない、だから、暑さの影響だと考えるのかも知れない。だけども、経営全体を考えた時にそうしたスポットの影響だけではなく、もっと本質的なところを見なくてはいけないと思う。
2019年から始まったコロナショック、その後のインフレによって、酪農経営は逼迫された。不況が起きた時、経営者が取る手段は1つ。緊縮。つまり、コスト削減である。2022年、2023年と経営が悪化した経営者は、「このままではまずい」と極端にコスト削減に取り組んだと思う。仕事上のあらゆる経費を抑え(プライベートの出費は減らさず)、コストを抑える、コストを抑える。これは酪農経営に限った話しではないが、経営が悪化した経営者がやることと言えば、大抵、コスト削減である。コスト削減くらいしか思いつかない。
その結果が、徐々に経営を蝕み下降させ、乳量が伸びない事態を生んでいるのだと思う。乳量が回復している経営は、それまでにやってきた投資が生きているのだと思う。今までコツコツやってきたさまざまな小さい投資の効果が今に出ていきている。それが結果として、乳量や個体販売に価格差となって、数字に表れている。その効果も、この先、永遠に続くものではない。同じようにどこかで、コスト削減に走れば、徐々にその効果も薄れていくだろう。
コスト削減は、経営が悪くなってから取り組むべきことではない。経営している以上、常に取り組むべきこと。無駄な経費など使っている余裕はいつもない。経営が悪くなってからコスト削減するということは必要な経費を削る行為であることから、売上が伸びないのは当然のことだろう。
売上を伸ばすには、経営者として、最大限の努力が必要になる。当たり前である。売上を増やすことは、簡単じゃない。経営者の誰もが苦労している。悩んでいる。分娩が増えれば、乳量が増える・・可能性がある、だけで、周産期の問題、乾乳管理の問題、さまざま生じる。それらを完璧にクリアすれば、可能性が高くなる、ということである。さらには、進化する乳牛に対して、こちら側も工夫しなくてはならない。当然である。が、つい日々を過ごしていると忘れてしまうので、注意しなくてはならない。
当たり前だと思っていることが、当たり前にいかないことが、沢山ある。そのことを強く認識して、常に対応していく、そういう精神でないと経営はできない。