㈱牛コンサル 酪農コンサルタント 代表中野です。

ビジネス書や経営者の本を読んでいると、大抵こういった「トイレ掃除」の話が話題に上がります。
ある経営者は、整理整頓、清掃を社員に行き渡らせるためには、トイレ掃除から徹底させるべきだ!と言っている、一方で、わざわざ高い給料払って雇った社員に対して、トイレ掃除をさせるのは、給料の無駄ではないのか?と言っている方もいる。
どちらが正しいのだろうか?
皆さんも経営者なら自分で、「答え」を考えてみてください。

ちなみに両方の言い分を載せておきましょう。ここでは、僕がどう思っているのか?は伏せておきます。ぜひ、皆さんが経営者として答えを出してみてください。

「トイレ掃除をさせるべき」
今は経営幹部になって会社を引っ張っていってくれる人ですが、その人が入社して間もない時、自分がトイレ掃除をすることに対して不満を言ってきました。
「どうして大学を優秀な成績で卒業した自分がこんなことをするのか、自分は経営者になるためにこの会社に入ったのであって、トイレ掃除をするためではない」というのが彼の理屈です。
私はそれに対して、厳しく叱りました。
「目の前の一人のお客様を大切にできない人が、何が経営者ですか。そんな人が、世界中の人を喜ばせることなんてできるわけがありません」
このような趣旨のことを言ったと記憶しています。

「トイレ掃除は必要ない」
早朝出勤で掃除をさせたら、優秀な社員が消えた。
あるデザイン事務所の社長が「優秀な人材を採りたいのだけど、募集しても集まらない」と言って、私のところへ相談に来たことがありました。話を聞いてみると、よい人材が取れないだけでなく、前からいた有能な社員も辞めていっているというのですから、事態は深刻です。
その会社の社長は優秀な女性で、業界でも急速に頭角を表したやり手でしたから、本当なら学生の人気が高い会社になってもいいはずです。不思議に思って「会社でどんなことをしているの?」と聞いたところ、なんと「毎朝、早朝出勤して社員全員で掃除をしています」と言うのです。
そんな会社に優秀な人が来るわけがありません。
べつに掃除が悪いというわけではありませんが、社員にクリエイティブな仕事をして欲しいなら、クリエイティブな仕事ができる環境とプライドを、経営者が提供しなくてはなりません。

どちらの意見も正しいように聞こえると思います。
1つ言えることは、会社の規模、ステージによって、答えは変わるかもしれない・・ということです。経営者がどんな会社にしたいのか、社員に求める仕事の内容、質はどこにあるのか・・・また、どんな教育をしていくのか・・・それらを複合して考える必要があります。
経営者が社員に言えば、変えることができるのでしょうか?・・他人を変えることは簡単にはできません。「やってみせ、言って聞かせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」と言ったのは、山本五十六ですが、それだけ社員1人1人の考え、思考を変えるのは、時間と根気がかかることです。
そこに「答え」はありません。何度もぶつかりながら、やるしかないのです。